じじらぎ

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オンジョ鍋とカンジャッぶろ

∇…126     黴(かび) のついた古レコードの水洗いが3日がかりで一段落した。まずは成功。古い音楽が洗濯でよみがえった。

その際の道具の選定、作業のやり方は試行錯誤を重ねた。その結果、高圧で水をふきつける舶来の道具を唯一の例外として、なにもかも古めかしいところにおさまった。

別に構えたわけではないが、レコード盤を復活させるのに超アナログの手法が有効であった。


∇…120

∇…122      道具は図らずも“昭和レトロ” の趣となった。まず、水切りはバラ、ショケ。つまり竹ざる。

LPのレコード盤は意外に大きい。これをおさめる水切りのザルは今はやりのビニール製では大きさが足りない。倉庫を探索して、古来のバラ類が控えているのを発見した。

困ったのは、その前の水洗いのための容器。大きめの洗面器でもおさまりきれない。金盥(かなだらい) がないか探してみたが、やっぱりない。代用品として目についたのが“オンジョ鍋”

この鍋は底が丸い。そのまま据えると不安定で扱いにくい。ちょっと大げさかな…と思いながらも、台座として“カンジャッぶろ” も動員することにした。

かくて腰がまともにたたない爺ぃが古民具をもちだしてアナログのレコード盤の洗濯にかかり、婆さん犬がそれを見物する図になった。


まぁ、面白くもなんともない話だが、オンジョ鍋とカンジャッぶろのセットが懐かしい。

今どきは、現物を見たことのない人の方が多くなったに違いない。それと、呼び名にどことなくひょうきんな響きがないこともない。


オンジョ鍋は内径が70㌢ある。昔の言い方だと2尺余というところ。素材はアルミで大きさの割に軽い。これを支えるカンジャッぶろは直径66㌢、鉄の鋳物で重い。アルミが普及する以前はおそらく炉も鍋も鉄で、屈強の男でないと思うように扱えなかったに違いない。

昔、厨房に男は立ち入らなかった。しかし、野外での煮炊きになると話は別で、男(オンジョ) が出てこないとさばけない。おそらく、そんなところからオンジョ鍋と呼ばれるようになったのでは…と推測している。


オンジョの由来は方言学の上村孝二博士の説では「御尉」(おんじょう) 。「尉」 というのは姥(うば)、媼(おうな) に対応する言い方で男の相応に古くなったのを指す。

尉と言い捨てにするのをはばかって御の字を献上してみたが、ご丁寧な言い方をしてみて必ずしも敬意が深まらないところが悲しい。年を食って年甲斐に突っ張ってみようとあがく中古の男どもを、軽く揶揄する響きもある。

オンジョにまつりあげられた武骨な大鍋は庭先でタケノコなどを大量に煮るのに具合がいい。おおぜい集まって「いも煮会」 や闇鍋、野戦料理風のごった煮をやるとなると、やっぱりオンジョの出番である。

オンジョの鍋を抱く炉は「カンジャッぶろ」 にきまっている。われ鍋にとじ蓋…といった間にあわせではない。オンジョ鍋を鎮座させるためにつくられたのが、このふろ。

それにしても普段は聞きなれない言い方である。「カンジャッ」 は、芭蕉の俳諧の「さび」 に通じる「閑寂」 に由来するのかと思っていた。が、そこまで難しく考えることはなさそう。漢字を当てれば、おそらく「簡略」。ふろは風呂ではなく風炉である。

簡略をカンジャクと呼ぶのは乱暴と思う人がいるかもしれない。実は、これはよくある鹿児島方言の訛り(音韻変化) のひとつ。

島津の殿さまの別邸や尚古集成館のある鹿児島市磯の名物に「両棒餅」 というのがある。竹の串が2本さしてあって、それを中国語式に数えてリャン(両) と呼んだ。しかし今は、リャンボウと呼ぶ人はいない。

R音はほんらいの日本語になかったので言いにくい。リャンはヂャンで片付けた。かくて「ヂャンボ」 が鹿児島の標準語として定着する。

ジャンボ餅というから、でかいのかと思ったら名前負け…と苦情を言う人がいたが、この場合のジャンボは巨大であることと関わりはない。


ついでながら、R音が言いにくいので他の音で代用する例は多い。たとえばラッキョウはダッキュ、落花生(らっかせい) はダッキショ。

古くはランプをダンポ、嫉妬・焼餅の悋気(りんき) をジンキと言った。もう爺の年代でも知っている者は少数派であろうか。

この訛り方はそこそこに徹底した趣があって、R音が変化するのは語頭に限らない。単語の途中の音節でも変化することがある。

たとえば、柱をハシタ、卵の白身をシトミという。おそらく最初はハシラをハシダと言い換えた。ダの音が重すぎるので軽く清音化してタで済ますようになった経過が考えられる。

それほどにラ行音を嫌った。簡略がカンジャッとなっても何の不思議もない。


その後、時を経、世代を重ねて、鹿児島人でもR音を造作なく発音できるようになった。おかげで、ランプなどよりも遅れて登場したレコードは「デコード」 などと呼ばれずに済んだ。



それにしても、デジタルばやりの今どきは、レコード自体が過去の遺物になってしまった観。CDがずっと音が良いということになっている。

なぜに今、レコードか…という話になると、また長くなる。ひと言で言えば、雑音が好きだから…。

人の声も、ヴァイオリンやチェロの弦の音も実は雑音が競い合い絡み合った複雑な音の塊なのかもしれない。 

なにもかもデジタル処理して澄み切った音にしてしまうのも良い。が、水清ければ魚棲まず…。

絶滅寸前のオンジョには妙なこだわりがあって、カスレやキシミが聞こえてこないと本当の音を聞いた気がしない。



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COMMENT
Re: タイトルなし
お久しぶり。お元気そうでなによりです。

ナナノタカさんは記憶にないので戸惑いました。このところ小宝島はすっきりしない天気が続いています。しかし、もうじき落ち着いてくるはずです。

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御無沙汰しています。

トカラの前に住んでいた、播州、近所の高砂の「尉と姥」伝説http://www.city.takasago.hyogo.jp/index.cfm/7,1947,85,html を思い出しました。聴きなれない言葉に、じじさんお得意の「生粋の」薩摩弁かと思いきや、こんな繋がりもあったのですね(^^)/
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