じじらぎ

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「女生きてます」

いまパパラギに女はいない。 女将はのぼった木から降りずに、お得意の短絡でそのまま落下した。 その際にポッキリ折った左腕のくっつき様が悪くて再び鹿児島詣で。 

宿は爺とサン婆(生まれた当座は女だった) が閑居する。 

女抜きでやりたいことはいっぱいある。 ただ、目も耳もダメなサン婆にやりたいことを勝手にやられると不測の事故が心配なので、紐でつないだままお犬さまの閑居。

爺は腰の痛みがぶり返して、立つのも座るのもしんどい。 やむなく引き籠る。 

やりたいことを我慢するかわりに怠け心を全開放することにした。 余念なく寝そべってテレビと雑本のウオッチングに日を過ごす。


衛星劇場というCS局で日曜日の無料番組として放映していたのが「女生きてます」。  


年をとると涙もろくなるというが、爺の場合はすっかり干上がっていた。 と思っていたら、喜劇映画をみて涙が出た。 不覚であった。 
この映画は1971年(昭和46年) に封切を見ている。 監督は森崎東という初めて名を聞く人。
 

当時は地方新聞の記者をしていて映画を見るのも仕事のひとつだった。 神聖な業務である。 仕事でなければ、ドタバタ喜劇なぞ見ることはなかった。  

見たあとで大変な役得であったことをかみしめた。 それから40年、再映を見て、あらためて引き込まれた。


人間というものが、どうしようもなく身勝手で、愚かで、哀れで頑是ない存在であることをウソやごまかしを排して描ききるのはレアリズムの手法ではかえって難しい。 たまに身の程知らずがいて文部省(文科省?) 推薦や芸術祭参加の名画がつくられる。 

関係者の間で仲間褒めして国民必見ということになっても、映画館ではなお閑古鳥が鳴く。

喜劇なら出来る可能性があるかもしれない。 それを実証して見せたのが「喜劇 女生きています」。


封切を見て久しぶりに好意的な映画評を書いた。 しかし、当時は少数派だったような記憶がある。 いまはどんな評価なんだろうか、ネットで調べてみた。


キネマ旬報が1970年代の特筆すべき名画を知識人、文化人などに尋ねたところ、「女生きてます」 を挙げたのはたった一人だった。 

今は亡き立川談志がその人。 70年代のベストスリーの一つに挙げたという。 なるほど、説明しろと言われると困るけれども、なんとなく納得できる。 

ひょっとしたら、今の状況を予言するできごとかもしれない。



独断を承知で敢えて言う。 今ほど大量に喜劇もどきの芸能が供給されている時代はない。 

テレビをつけるとどの局もおちゃらけ、おふざけ番組ばかり。 自称他称の芸人や芸のない芸能人たちが集まって仲間うちでゲームをしたり、飯をくったりする場面を公共の電波で垂れ流す。



量が過大になるのに反比例して、質は落ちた。  


テレビドラマも映画も、本番の制作・製作よりも宣伝の方にだけ力をいれたような物ばかり。 

歌舞伎も東京湾の埋め立て地・築地の田舎芝居だったころが懐かしい。 歌舞伎がローカルでなくなって、歌舞伎役者の多くは芸能ニュースに出ずっぱりの大スターになってしまった。 もともと馴染みが薄かった歌舞伎が
いっそう遠くなった。


「女生きてます」 では左幸子がストリップ嬢派遣業者のおかみさんを演じている。  その後の回想では、役者として未熟だったといいながらも、忘れられない仕事だったと語る。

自分が出演した映画でも2度見ることはないという左さんは、「女生きています」 に限っては再映のたびに必ず見る。見るたびに新しい発見と感動があるという。 


記憶はあいまいだが、スティーブン・スピルバーグが新しい映画をつくる前には必ず、デビッド・リーンの「戦場にかける橋」 を見るという話を何かの記事で読んだことがある。 これも説明しづらいが、なんとなく分かる話。


この映画は高校生のとき見た。 ひねくれ者の餓鬼が映画を見て初めて泣いた。


あと、「戦場にかける橋」 のリメイク版がつくられた話を聞いたときは怒った。 

鑑賞が創造を上回ることもある。 名作をなぞって出来そこないをでっちあげる暇があったら、過去につくられた名作をくり返しくり返し見る方がもっと有意義だ。 どだい、名作の真価が分かっていたらリメイクなぞ思いつかないはずだ。 
 

そんなわけで、アーサー・ペンの「奇跡の人」 のリメイク版は見ていない。 幼いころのヘレン・ケラーを演じたアン・バンクロフトがカラーになった新作ではサリバン先生を演じているらしいが、見たら腹がたつに決まっている。


きょうの活動写真の話のまとめ…。 

映画史に銘記すべき私選の傑作は洋画では「奇跡の人」、「小さな巨人」(これもアーサー・ペン)、「戦場にかける橋」、スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」。ほかに、「壮絶敵中突破」というのもあった。 

「…敵中突破」はソ連製の戦争映画。 原題は分からない。 たしか池袋の人生座で見たが、その後に再映された話も評論にとりあげられた話も聞かない。

日本映画では、きょう思いつくのは、ひとまず「女生きてます」。 今村昌平の「神々の深き欲望」。 あと何か大事なところを忘れているような気がするが、思いだせば話がまた長くなる。   
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